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異世界人に職業案内 .
しなやかな細腕でこちらに向けられた鋭い剣と、蛍光灯に冷たく光る銅の円盾。
到底日本の現代社会には見合わぬ代物の両方が今、こちらに向けられている。
物騒な武器を手馴れた様子で構える鎧姿の女性は、荒々しくも凛とした彫りの深い顔立ちに燃えるような美しく長い赤毛。まるでゲームの中から飛び出してきたようなビジュアルだ。
そしてその目はまるで敵でも見るように挑戦的だった。
その視線の先には、スーツ姿でクリアファイルを抱え震え上がる私がいた。
「アンタやろ!あたしのダーリン誘拐したんはああああああああああっ!!!南無三んんんんんんんーーーーーっ!!!!!!!!!」
「ですから!あなたの彼氏なんて存じ上げません!」
「嘘こけーーーーッ!」
叫びながら彼女は駈け出す。振り上げた剣はコンクリート打ちっぱなしの地下室の壁にぶつかり激しく火花を散らす。
死に物狂いでその脇をすり抜けた直後ギャィィイイン!と鳴る残響で私は自分がそれをかわせたのだと知る。
「あなた様は本日こちらに転生されたということで!私がお仕事のお世話を任されまして!」
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