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聞く耳を持たない相手に私も必死に叫ぶ。外人風の外見にもかかわらず彼女の口からほとばしる関西弁の暴言…というかいわれのない悪口と物理的暴力に平和な図書館員の私は追い回されていた。全力で。
「人の男とっといてなあ!被害者ヅラしよって!!!死ねやーーッ!!!この極悪魔女がァアアア!!」
狭い部屋の中を必死に走り回る私〈図書館司書・推定Lev.1〉VS ゴージャスな髪を振り乱し半狂乱で私を追いかける女勇者〈生粋の勇者・推定Lev.ラスボス倒せる程度〉。
図書館員兼ただの異世界人への職業案内係である私には叩かれるいわれも切られるいわれもない。
それにも関わらず向けられるものすごい敵意。
上りきった呼吸では肩を上下させなければまともに息も吸えない。
「待てぇええええ!コラァアーッ!!」
「っですからっ!一度っ!お座りになって!お話を!」
「ダーリンはどこやァアア!!!」
金属の剣に対してペラッペラの戸籍作成依頼書入りクリアファイルで攻撃をしのがねばならない悲劇ときたら。
私の一体どこに彼女の異世界王子を誘拐したフラグがあったというのか。
いやいやあるかそんなもの。あるわけない。
私の本職は図書館司書だ。剣と盾で戦う生活なんて望んでいないし、むしろ右も左もわからない異世界の住人に親切にしているんだし。とにかく椅子に座って話を聞いてほしい。
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