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「あはは。わかりました。でも本当は本のあるところで飲むの良くないですよ」
談笑を続けながら私の思考は掃ちゃんこと館内の少しの汚れも許さない美少女清掃員、掃部の姿を思い浮かべていた。愛しの、と言うと語弊があるけれど、憧れの、と言うのは許されるだろうか。
妄想の中で掃部が基本無表情の目をつり上げ、トレードマークの黒いハタキを井村につきつけ怒りだす。
『井村さん…没収させていただきます…』
怒ったところで私の掃部先輩は、はしたなく大声を出したりはしない。
氷のように冷たい絶対零度の神美声で、ささやくように怒るにちがいない。
そして怒りのあまり小動物のこどものようなあの大きな丸い目を潤ませるのだ。
バイオレットの瞳がうるうると揺れ、図書館勤務には少々奇抜な迷彩柄のメイド服の裾を小さな手が握る。ムッと唇を噛み締め睨みつけている顔も。うん。………可愛い!可愛すぎる!
どう説明したらあの魅力的なビジュアルを伝えられるだろうか。こればかりは自分の語彙力の欠如具合を恨むしかない。もっと、もっと本を読まなければ。掃部先輩の愛くるしさを、美しさを語る資格などない。
あ、いかん。井村さんと話してた。
妄想の世界から現実に頭をシフトすると井村はまだ話の途中だ。
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