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「でも飯田さんだってもう何回か僕を見すごしてるんだから共犯だよ」
いたずらな顔で微笑む。中高生の女の子ならポッと?を染めてしまいそうな笑みだ。
「それはずるいです井村さん。私なにもしてないのに一緒に犯人扱いですか」
「あとこのコーヒー淹れてるの候江君だから彼も共犯なんだけどね」
「それそうだったんですね。知りませんでした」
「ね、だからナイショ」
井村が意外と幼い白い八重歯をのぞかせ笑った。私たちは静かなフロアでくすくす笑いあう。
こんな風にたわいもない雑談で笑いあう気さくな上司、井村孝は私が知るかぎりこの世で最もスマートな人間だ。
そして同時にここの若き館長。
私の憧れの図書館司書。表向きは。
「おたまさん。お早うございます」
「候江さん!おはようございます!」
そうこうしている間に現れたのは噂の候江だった。候江吉翔。通称〈居候〉。
候江は直属の先輩にしてこのビルの屋上に建つ小屋に居候しながら働いている変わり者。
だから〈居候〉。
「お早うございます。おたまさんの資料の製本、とても美しく。某ではあのようにはいきませんので、大変感服致しました」
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