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第6話「それぞれの誓い」
スガレが連れてこられたのは、皇帝派と呼ばれる前政権を握っていた勢力の隠れ家だった。
先代が崩御し、皇族最後の生き残りである少女アゲハは現皇帝にあたるのだという。
つい先ほどまで、スガレにとっては初めて接した同じ年頃の女の子でしかなかったのだ。妙に大人びた態度を取りたがるのに、なぜ必要なのかもわからないリボンを欲しがったりもする。さっぱり理解できないが、それで当然という気もする不思議な存在。
だが今は、本当の意味で彼女が遠く見えた。
アゲハは中年の臣下と打ち合わせをしたあと、近くの扉から出ていった。そのあいだ、一度もスガレのほうを見なかった。
「オレは皇帝どころかこの国のこともよく知らないのに、蟻塚から出ていきなり争いに巻き込まれるなんて……」
死ぬまで、空中牢獄ギノユニワで生きるのだと思っていた。
時の動かない、光の届かないあの巣穴で。
それが突然外の世界に放り出され、悩むひまもなく、だれかに保護を求めるしかない状況に立たされた。
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