第1話「空中牢獄」

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 呼吸が整ったあと、アキツハはスガレに向かって何度も繰り返した言葉を伝えた。 「スガレ。私はもう長くありません。生まれたとき医者に宣告された寿命は、何年か前に過ぎました。私の残り時間ではこの空中牢獄にいる罪人すべての償いを受け取ることはできない。だから貴方が、一人前の免罪符売りとなって、彼らを罰から解放してください」  スガレは師の手を握って、安心させるように力強く頷いた。  パンとスープのみの朝食と身支度を終えて、アキツハの後ろについて外に出る。  スガレは目に入る日光の眩しさに思わず眉をしかめた。牢獄の外壁に面する通路には、窓代わりの小さな穴が横一直線に並んでいる。外に暮らす者から見ればわずかな光に違いないが、それでもこの閉鎖された牢獄に暮らす者にとっては太陽そのものだった。  空に浮かぶ牢獄、ギノユニワ。  通称『蟻塚』と呼ばれているが、その名のとおり内部は迷路のように入り組んでおり、蟻の巣穴に似たいくつもの部屋と細い通路が連なっている。     
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