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元は皆、本国の民と同じで背中に翅を持つ連中だ。逃げられないよう投獄される前に翅はもがれてしまう。取り戻すには、免罪符売りに罪の証を消してもらうしかない。刑期という法がなく、時間での償いが不可能なこの国の罪人が空中牢獄の外に出るには、『労働と人助け』で己の罪を清算するしかないのだ。
免罪符売り、と名乗ってはいるが実際には税の取立人のようなものだ。アキツハとスガレたちは、罰を消す対価に罪人から何かをもらうわけではない。
星空に似た輝きを放つ鉱石が埋め込まれた祈りの部屋で、二人は向かい合って膝をつき、毎朝の決まりである誓いの言葉を口にした。
「罪を憎んで人を憎まず、裁きは神の手中にあり」
「罪を憎んで人を憎まず、裁きは神の手中にあり」
アキツハの祈りを、スガレが繰り返す。
「わたしたちは断罪者にあらず、顔のない徴収者にすぎない」
「わたしたちは断罪者にあらず、顔のない徴収者にすぎない」
「わたしたちは償いを終えた罪人を赦さなければならない」
「わたしたちは、償いを終えた罪人を赦さなければならない……」
「スガレ、集中してください」
「申し訳ありません」
千回以上も繰り返してきた祈りの言葉が、最初は嫌でしかたがなかった。何故自分が、何の関係もない罪人を赦し、彼らの償いに責任を負わないといけない?
そう問うても、神は答えない。
生まれつき翅が無い。
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