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それだけの理由で親族から見放され、同じ年頃の子供たちが勉学や武芸を始める時期を見計らったかのようにこの見すぼらしい牢獄に送り込まれた。
父のような官僚になりたいとか、兄のような軍人になりたいとか、幼心に描いた夢は早々に潰え、閉鎖されたこの場所で免罪符売りとしての一生を過ごす運命が決定づけられてしまった。
「はい、よくできました。今日もよろしくお願いしますね」
アキツハがスガレの跳ねた硬い髪を撫でて直す。
師には美しい翅があるが、どうせ長くは生きられないからとこの役目を押しつけられたと古くからいる罪人に聞いたことがある。
見習いとしてやってきたスガレに、アキツハは優しくしてくれた。
両親や兄たちと違って、翅の有る無しに関係なくちゃんとスガレ自身を見てくれた。
この師がいたからこそ、スガレは閉ざされた小さな世界でも明るく暮らしていられたのだ。たとえ未来の可能性を一切失ったとしても。
朝の祈りを終えると、免罪符売りは原則として番号の早い罪人のところから訪問していく。
「アキツハ様、第七曜日なのに本国からの配給はやっぱり来ませんね。ほんとに昔はきっちり来てたんですか?」
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