一章

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一章

もみじ狩り 長野県の北部に、現在は合併により無くなってしまいましたが鬼無里村という小さな集落があります。 方々を山に囲まれた盆地で、人々は限られた土地に田畑を作り暮らしており、まるで日本のむかし話に登場するようなのどかな土地です。  数年前、私は兄と二人でこの鬼無里を訪れました。ここには「紅葉伝説」という、鬼女の伝説が残っているからです。  能や御伽草子に詳しい人なら聞いた事があるかもしれません。かつて平安の時代、都を追われこの地で山賊となり、そして鬼として討たれた女性・紅葉の伝説です。  兄も私もオタクで、こういった話は興味があります。鬼無里の山中にある、山賊・紅葉のねぐらだった洞窟が残っているという事なので、面白そうだから行ってみよう、という流れになりました。いわゆるSNS映えを狙っての行動でした。  群馬県を経由して長野に入り、道の駅で車中泊。洞窟へは早朝に向かう予定です。その日は特にトラブルはありまでんでした。  翌朝も気持ちの良い快晴で、初夏の緑が香り、そこかしこから漂ってくるようでした。     
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