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やはり閉鎖空間は少しそわそわする。早く着かないかなと気が逸るなか、俺の気など知らずにエレベーターは五階で急に止まった。ゴトンという音とともに停止したエレベーターはしんとして、誰かが乗ってくるどころか扉が開く気配もない。
嫌な予感がした。背中を生温い汗が伝う。
エレベーターの表示は五階のままだが、防音され電波も届かないこの箱のなかから現在地を確認するすべはない。
急いで緊急ボタンで助けを呼ぶも、焦る気持ちはどんどん加速する。止めどない汗はじっとりと俺の衣服を湿らせていく。襲いくる震えと吐き気。
一分一秒が普段の何倍にも何十倍にも感じられる。この時間をあといったいどれくらい過ごせばいいんだ。
どくどくと流れる血流が俺の呼吸のリズムを乱す。息苦しさに顔を歪めた――そのとき、俺の視界を黒い影がちらついた。
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