キミよりシロミ。

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「……家ではこんなもんだよ。そんな事より! キミ何してんの? こんなとこでさ」  ああ、と男の子は塩飴をがりっ、と噛んだ。 「受験勉強してたら昼夜逆転した、から?」 「……はぁ?」 「陽の中にいようかなって。でも直射だと目ぇ死ぬと思って──」 「──そんで黒い傘、か」  うん、と男の子は頷く。  変わった奴だなぁ、と思った。 帽子被ればいいのに傘って。 「……ここ、人いないし、考え事するにはいい場所で。おまけに景色、いいよね」  それには同意する。 「……でもだからって装備ぐらい整えなよ」 「うん、ごめん──ありがと」  助かったです、命的にも、と男の子は言う。  夏休みの受験生の私。 思いもよらず、家のすぐ近くの公園で変な出会い。 黒い傘の下で、男の子が微笑む。
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