恐るべき牽制の紳士淑女協定

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恐るべき牽制の紳士淑女協定

「じゃあ、俺はこれで」  真坂の声が聞こえて、すっかり夢中になっていた僕は悪の組織シャイロックとの戦いから現実に引き戻された。  25分ものを1本見終わると、会は終了なのだ。  ああ、と返事をする間もなく、さっきまで一緒になって70年代アニメを見ていた同好の士は、再びマスクをつけて伊達眼鏡をかけた。  真坂とは、今年の4月に同じクラスになってからの付き合いだ。  正直、僕は趣味の違う相手とはそれほど深くかかわりたくはない。  しかも、背が低くて小太りで、動作も鈍いことは自覚している。  たぶん、クラスではキモオタのレッテルを貼られているだろうが、そんなことは別に構わない。  言いたい奴には言わせておけばいいし、別に人に好かれたくもない。  僕には、僕の趣味があればいいのだ。  一方で、真坂は背も高く、鼻筋もすっと通っていて、二重瞼の目はぱっちりと明るい。  当然、女子にはモテたが気取る風は全くなく、男子に対して適度に冗談も言えば下ネタも絶妙のタイミングで入れてくる。  つまりは、どこに出してもいい顔ができる奴だ。     
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