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普通に考えれば、僕と真坂の間には越えがたい溝があるはずなのに、春の遠足のグループ分けでお互い仕方なく言葉を交わしてから、妙にウマが合った。
僕の前では、真坂は余計なことは一切しゃべらない。
別に無理に話したい事などないから僕も黙っているのだが、どうやら真坂はそれが楽なようだった。
人前では、いつも笑っているのだが、僕の前では眉一つ動かさないこともある。
嫌われまいとしてキャラをつくっているんだということが、最近ようやく分かってきた。
意外なのは、僕と同じ趣味を持っていたことだった。
しかも、モテるのに彼女はいない。
真坂が言うには、凪原なんかは男子同士が「抜け駆けなし」の紳士協定みたいなものを結んでいるということだった。
ということは、女子も真坂をめぐってけん制しあっているということなのだろうと僕は思っていた。
まあ、オタクのレッテルを貼られて長い僕には関係ないが。
そもそも、時間の流れは僕だけ違う。
年賀状シーズンに、冬コミの原稿を書いている人たちのように。
そんな人たちとも、僕は関係ない。
なぜなら、70年代のSFは、どんどん消えていく。
探そうとしても、せいぜい動画サイトで違法アップロードされた海賊版ぐらいしか見当たらない。
だから、この「倶楽部七拾年」は僕にとって他人との唯一の接点といえなくもない。
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