美少女のディープなオタク談義

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 その隙に、僕は制服の袖口をぐいと掴まれた。 「今日は行かないの?」  ようやくのことで「え」とだけ言葉を返すことができた。  凪原はマフラーの奥からくいと顎を上げてわざとらしく笑った。 「あるといいね」  そのまま僕の腕を引いて歩き出す。  おっとっと、と普段では口にしないような声に自分でも驚きながら、僕は思わぬ道連れと、行きつけのDVD店へと向かうことになった。  昨日、凪原が返して僕が借り損なったDVDは、まだそこにあった。 「よかったね」   実をいうと、もうどうでもよかった。  昨日も急に話しかけてきた凪原が一晩中気になって、棚にかけていた巻のことなど意識の彼方に吹っ飛んでしまっていた。  だが、敢えてそう言われると、手に取らないわけにはいかなくなる。  仕方なくカウンターへ向かうと、凪原もついてきた。  この店でしか使えない、薄っぺらいプラスチックのカードを出して手続きを終えると、すぐ後ろに立っていた凪原が数本のDVDをカウンターに出した。  バーコードを当てる店員の手元をなんとなく見ていると、透明のパッケージに入ったディスクの表面に、見慣れたロゴがあるのに気づいた。  1枚、2枚……。     
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