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昭和にハマったクールビューティ
あれは、地元の高校に入学した年のことだった。
2学期も終わりに近づいた、ある日の昼休みの終わり頃。
僕は意外な人物が意外な言葉を口にするのを聞いた。
教室の黒板側にある出入り口近くの席からでも、窓際で話し込む女子たちの会話は分かる。
彼女は、どういうきっかけからかはよくわからないが、ずいぶん古いネタを使った。
「かかわりのねえことでござんす」
それは、70年代の人気時代劇で、三度笠のヒーローが毎回のように口にする殺し文句だった。
凪原あきらには、似つかわしくない。
だから「なにそれ」と周りの女子から軽い突っ込みが入るネタだったのも無理はなかった。
そもそも彼女はクラスではかなり可愛いほうで、取り巻きも多い。
女子高校生としても、かなり小柄な身体は、長い黒髪とはかなりアンバランスだ。
ちょっと気になってはいたけれど、僕としてはそこまでだ。
入学して半年を越せば、クラス内あるいは同学年内の立ち位置というかキャラというか、それ相応の扱われ方や振る舞いが決まってくる。
つまり凪原は、僕とは違う世界に住む美少女だった。
少なくとも70年代時代劇ヒーローのセリフをネタに笑いを取るタイプじゃない。
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