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だいたいヒーローといえば、「弱きを助け、強きを挫く」のが相場だが、このドラマはちょっと違った。
弱いものがいじめられている現場に出くわしても、助けない。
この一言を残して去っていくだけだ。
だが、残された者は、見守られていると信じて猛然と立ち上がり、窮地を脱するのだった。
それでも、巨大な暴力には敵わない。
個人の力ではどうすることもできなくなったときにこそ、この男は一陣の風と共にやってくる。
なぜ僕がこんな古い時代劇を知っているかというと、毎日のように再放送を見ていたからだ。
小学生の頃、帰りの会が終わっても道草食って遊ぶ相手はいなかった。
まっすぐ帰宅して、そのままテレビを見ていると、この番組が始まる。
終わるころにはも、町の広報無線で「焚き火」(作詞 巽聖歌 作曲 渡辺茂)が流れ、「暗くなるから子どもは帰れ」と促すメッセージが入るのだった。
だが、これは友達のいなかった僕だから知っているのだ。
どう考えても、彼女はそのタイプではない。
やがて昼休みの終わりを告げる午後の予鈴が鳴って、次の時間の教科担当がやってきた。
凪原は歌いながら席に戻る。
70年代グラムロックのリズムだった。
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