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そそくさと歩き出すのを追いながら、僕も同じようにマスクをかけ、タイプの違う伊達眼鏡をかけた。
やっと、見られる。
1977年に「マグネットシリーズ」第2弾として放送されたが、余りに主人公メカが格好悪いのでほとんど再放送されることもなく、忘れられてしまったアニメだ。
日本が安定成長に入った頃、地球の経済を裏で操ろうと目論む悪の商人ボルテウスが、秘密組織シャイロックを結成して繰り出す怪物ロボット。
それに立ち向かうのが、正義のビジネスマンたちによるスパイ組織「ボルタックシークレット」だ。
選び抜かれた個性的な5人の若き企業戦士たちが遠隔操作で操る合体ロボット「ボルタック」。
状況に合わせて木火土金水の五行になぞらえた5タイプのパーツがどう組み合わされるかが、毎回の目玉だったという。
「やっと来たか……」
つい口元が緩んでしまうが、マスクをしているから、呆けた顔が人に見られる心配はない。
グラウンドからは、マーチングバンド部が全国大会に向けて練習する曲が聞こえてくる。
それに背を向けて下校する帰宅部たちに紛れて足を速めると、それに勝る勢いで僕を追い抜いて行った女生徒がいた。
凪原あきらだった。
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