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「あ、話しているうちからお出ましだね。三浦くん」
その声にいち早く反応した千花と、ほぼ同時に振り向けば、開いたドアに手を伸ばした状態で、隣のクラスの三浦海斗(かいと)が立っていた。
濃いブラウンの地毛に、目鼻立ちが割と整っているせいか、三浦くんは少し遠くにいても目立っている。
そのうえ明るい性格だから男女問わず人気もあった。
そんな彼はサッカー部員だ。今年の夏の大会のあと、三年の先輩が引退してからキャプテンになったこともあって、以前よりもマネージャーの私を呼ぶために教室へ来ることが多くなった気がする。
「今、行くから」
見慣れたといえば見慣れた光景だけど私は、ほんの少し躊躇いながら、そう三浦くんに答えた。
すると千花は、「もうっ、七海はツンデレなんだからっ。もっと嬉しそうな顔をしたら?」なんてことを言う。
だから私は、ますます三浦くんを直視できずにいる。
「嬉しそうな顔って、三浦くんに何を思われるか分かんないし」
「思われるもなにも、もう告白してもいいくらいでしょ、七海は」
「こっ……」
三浦くんが少し離れた場所───ドアの近くにいるから助かった。
もしも千花の言葉が、彼の耳に届きでもしたら大変だ。
今は、ただのサッカー部員とマネージャーの関係なのに。
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