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「だって高校に入学する前から七海は三浦くんのことが、ずっと好きだったんでしょ。もう二年以上は片想いの状態じゃん。だったら……」
「その話は、今度ね、千花」
「えー、また誤魔化すんだから、七海は」
もう!と、呆れ顔をする千花をかわすように、私はサッカー部の部室へ向かう準備をした。
そして、スポーツバッグを持っている右手の甲を肩に置いた状態で、急かすようにトントンと上履きのつま先を床に当て音を鳴らしながら、ドアの前で私を待っている三浦くんの元へ、乱れた机のあいだをすり抜けて向かう。
「早くしろよな、休み時間に職員室へ行った時、監督に会ったけど、マネージャーに用事があるって言ってたぞ」
「えっ、竹内先生が?」
「だから俺がこうして高野を教室まで呼びに来たんだって。いろいろ細かい監督だからな」
「わっ、だったら早く行かなきゃ」
まさしく三浦くんの言うとおりだ。サッカー部監督の竹内先生は、なにかと神経質な性格だった。
「もっと早く言ってよねっ」
「はぁ? 俺が迎えに来ただけでもありがたいと思えよ」
ほんの少し憎まれ口を叩き合っているうちにも、足早に三浦くんが私に背を向け、階段へと向かって歩いて行く。
そんな彼を追いかけようとする私へ、「七海、ファイト!」と 、千花の声がしたのを聞き逃さなかった。
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