16人が本棚に入れています
本棚に追加
母と医者が深刻そうな表情で何かを話している。
どうやら、検査の日取りを決めているようだ。
医者と看護師が病室から出て行くと、母が私の手を握った。
「さぁちゃんっ、さぁちゃんっ」
どれだけしっかり握られても、そのぬくもりさえ感じることができない私の手を握り、母がぼんやりと開いた私の目を覗き込む。
私は真っすぐに母を見る。
すると母の目からは、たちまちのうちに涙が溢れこぼれた。
(あー、私・・・、最悪・・・・・)
母の涙を見ていたら、無性に悲しくなって自らの目にも涙がたまった。
寝ているせいで、涙は瞳の上にもかぶり視界が歪む。
そしてすぐに溢れた。
それでも自分で涙をふくことさえも出来ずに、涙はただ溢れては零れを繰り返すばかりだ。
母が泣きながら、私の涙をハンカチでそっと拭った。
「大丈夫。
きっと、よくなるから、よくなるからねっ。
さっき、お父さんにも連絡したし、康介にも連絡したし・・・。
ふたりとも、夕方には来てくれるからね」
病室の温度は一定で、寒くも暑くもない。
自分がどれだけの間、寝ていたのかも見当がつかなかった。
そもそもこんなに動かない体で、寒さや暑さを感じることができるのかさえ分からない。
さっき目覚めたばかりなのに、私の瞼は徐々に重くなる。
最初のコメントを投稿しよう!