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眠ってしまえばそこにいるのは、事故にあう前の私。
とりわけ勉強ができたわけでもないけど、毎日学校へ行き、友達と笑いっていた私が夢の中にはいた。
そしてやっと想いが届いたばかりの、優しい彼と笑いあう私がいた。
その私に向かって私は叫ぶ。
「お願いっ、学校に遅刻しそうになったらもう諦めてっ。
その日は遅刻してっ。
テスト休み明けの、テスト返却日。
お願いっ」
何度も、何度も・・・何度も。
私は夢の中で出会える、元気だったころの私に叫んだ。
***
「沙羅-っ!
今日の帰りさ、一緒に勉強して帰らない?」
ホームルームが終わると、仲良しの千秋が声をかけてくる。
「おっ、いいねぇ~。
私さ、数学わかんないとこあんだよねぇ」
「よしっ! それは、私に任せて。
その代わりっ沙羅、私に英語よろしく」
「交渉成立だねっ」
沙羅と千秋は笑いあうと、じゃれ合うように学校を出た。
「ねぇ、どこでやる?」
「うーん。
駅前のカフェなんかどう?」
「いいねっ」
こんな相談しなくとも、ふたりが勉強をするときはいつだってこのカフェだと決まっている。
それでも高校生ライフを思い切り楽しむかのように、ふたりは毎度そんな会話を交わしながら、きゃっきゃとはしゃぎ、カフェに入っていった。
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