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 もちろん、山田が犯罪者だなんて夢にも思わないが、謎が多いのも事実だった。だからといって本人に訊ねたところで、のらりくらりとかわされるのがオチだ。  山田のことで小春が知っていることといえば、住所――隣人なので当然である――と苗字くらい。あとハンバーグが好き。 「いいなあ。私も恋がしたいなあ」  すみれの声で、小春ははっと我に返った。冷め切った唐揚げを頬張ってから、 「恋かあ」  と、呟いた。  白米の上に浮かび上がった隣人の顔を見つめて、そうだね、と付け足した。
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