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 八時頃帰りますと、家には連絡を入れてあった。コンビニの掛け時計を見ると、現在七時五十分。そろそろファッション誌の立ち読みに見切りをつける頃合だ。  ファッション誌を棚へ戻すと、炭酸ジュースを手に取って、お菓子コーナーへ回った。期間限定の商品が新発売していて、少し悩んでから手に取る。  会計を済ませると、店員が梱包された小さめのグラスコップを一緒に袋へ入れた。知らずに買ったが、どうやらジュースのおまけらしい。重くなるなあ、と、炭酸を選択した自分を内心恨んだ。  軽快なチャイムと共に外へ出ると、なまぬるい夜風が頬を撫でる。春という季節は焦らし上手だ。安定しない気温の日々の中で、時折優しい風を吹かせたりする。だから、愛されやすいのかもしれない。  小春はのんびりとした足取りで歩き始めた。八時は少し越えそうだが、五分くらいなら春子も小言は言わないだろう。もう二十三にもなるというのに、母は自分に対していちいち心配ばかりする。いつだったかそう伝えれば、 「子供なんて、いくつになっても子供なの」  と、柔らかな笑みと共に返された。
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