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「やっぱり、女……だよなあ」
目の前に置かれた角皿を見つめながら、小春は呟いた。深さは足りないが、形と大きさはあのタッパーに似ていた。中にはパスタとポテトサラダではなく、厚焼き玉子が乗っている。
「なに? 食べないの?」
トイレから戻ってきたすみれが訊いた。どうやら、厚焼き玉子の方を見ていると勘違いしたらしい。
「あ、ううん。食べる食べる」
小春は箸を握り直すと、厚焼き玉子を一つ取って、取り皿へ乗せた。
隣で、すみれも同じ動作をする。居酒屋メニューとはいえ、厚焼き玉子は鉄板でおいしかった。
「今年新入社員多いわね」
厚焼き玉子を頬張りながら、すみれが目配せしてくる。
顔見知りで埋め尽くされている店内を見渡してから、小春は、確かに、と賛同した。
今日は新入社員の歓迎会で、飲み会に参加していた。
新入社員にとってははた迷惑であろう自己紹介や余興が一通り終わって、現在は歓談の運びとなっている。
「おう。お疲れ」
ジョッキ片手に真っ赤な顔をして現れたのは、小春とすみれの同期である田中だった。
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