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「えっ、なになに小春! もしかして、彼氏できたの?」
すみれが、ずいっと小春に詰め寄る。
小春は、顔の前で右手をぶんぶんと振った。
「違うよ! 違う違う! 彼氏じゃなくて!」
「お前のは脳内彼氏だよな」
「それも違う!」
「じゃあ――好きな人がいるんだ!」
名探偵さながらのポーズで、すみれがずばり言い当てた。
誤魔化すという所業が下手くそな小春は、小さく口の奥で、うっ、と呻いた。
「悪いな。俺はお前の気持ちに応えられない」
「大丈夫。全然田中じゃない」
「えーだれだれ? 私の知ってる人?」
恋愛ネタが大好物なすみれは、小春と田中のじゃれあいにはもはや興味を示さなかった。
「好きっていうか、なんていうか。気になってる、っていうか……」
気になってる、なんて、そんな生半可な気持ちではもう収まっていないのだが、なんとなく照れくさくて、小春は口ごもった。
「それって、会社の人?」
すみれはとにかく相手が気になるようだ。
「あ、ううん。違うの。二人は知らない人」
「年、いくつよ」
「仕事何してる人?」
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