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山田が立ち上がった振動で埃が立ちのぼって、二人で目をしかめて手で振り払う。けほけほと咳をしながら、ところで小春ちゃん、と、山田は小春を見下ろした。
「はい?」
「何しに来たの?」
小春は、むっと唇を尖らせた。
「お母さんと夕飯作ってたら、山田さんちからすごい音がしたから。何かあったんじゃないかって、慌てて来たんじゃないですか」
「ああ、そうなの」
「そうなのです」
「それにしては、のんきな足音だったね」
「……そう?」
「まあ、でも。助かったよ。ありがとう」
武骨な手が、小春の頭をぽんぽんと撫でる。
リズムに合わせて、小春の胸もふわふわ躍った。
「余る予定、ある?」
大惨事の片付けを始めながら、山田が訊いてきた。
「はい?」
「ハンバーグ。小春ちゃんち、今日ハンバーグなんでしょ」
「ああ、はい」
「余る予定ないの」
「……余す想定では作ってないと思いますけど」
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