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「うぅうぅぅううううぅうぅう」
渡りきったところで後ろの対岸のほうから呻き声が聞こえてきたんだ。たぶんアイツが追いついて来たんだ。
僕はポシェットからミニ注連縄を取り出したんだ。この注連縄は身代わり人形購入のおまけでついてきたんだ。見た目も嘘くさいけど,こうなったら総力戦なんだ。出し惜しみはなしなんだ。
細いヒモの端を巻いてると後ろからバシャバシャ音や呻き声が近づいているんだ。つり橋を渡ってきてるんだ。怖くて手が震えたんけど我慢したんだ。人形も効いたから少なからず効能はあると思うんだ。
僕は橋の入り口の柱に括りつけた後、とっとと先を急いだんだ。
しばらくは快調に進んだんだ。My結界の性能は知ることはできなかったけど後ろに気配はないから望外に機能してくれたのかもしれないんだ。
そうこう考えているうちに地蔵群のところまで来てしまったんだ。空を見るといつもよりも月が残っていたんだ。これなら余裕を持っていけそうなんだ。でも地蔵コーナーはかなりクセが強いんだ。去年のアケミちゃんのことが脳裏によぎったんだ。ここは慎重にいくべきなんだ。
一歩一歩ゆっくり進んでいったんだ。すると頭の中で声が聞こえたんだ。
「・・・・・・。わ・・・・・・。われ・・・・・・」
だんだん大きくなってきたんだ。でもなかなか聞き取れないんだ。そうこうしている内に最後の地蔵の前に来たんだ。一歩踏み出そうとしたら。
「我に捧げよ」
はっきりに聞こえて僕は動きを止めたんだ。踏みとどまれたのはアケミちゃんのお陰なんだ。これはかなり怪しいんだ。ここまま進むべきではないんだ。僕はポケットを探ったんだ。アメ玉が1個入っているんだ。これをお供えすれば良いのだろうか。
じっとアメ玉を見つめながらアメ玉に命を託すのか思いを馳せたんだ。
でも何かしっくりこないんだ。何かダサいし。ただの勘だけど他の物のような気がしたんだ。 その時思い出したんだ。真ん中あたりで祠のようなものがあって黒いドロ団子みたいなものが積んであったんだ。たぶんアレのことなんだ。
アレを取りに行くには引き返すしかないんだ。でもどうするべきか。後ろは振り返れないんだ。ならば前を見たまま後退するしかない。僕はあらたなる試みを前に額の汗を拭ったんだ。
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