2人が本棚に入れています
本棚に追加
真っ暗なトンネルを抜けると細い山道がつづている。満月の明かりで辺りがぼんやり映しだされる。
「また来たよお化けの国」
感激をかみ締めた。僕は嬉しかったんだ。また来ることが出来たんだ。これでまたお母さんに会えるんだ。年1回だけなんだ。お盆の真夜中にお墓の横の小川を渡ると祠の前にポッカリ穴が開いてるんだ。
「行くよ」
のサインを後に送り僕たちは一列になり前に進んでいったんだ。お化けの国では絶対しゃべっちゃいけないんだ。
僕たちは一本道を進んでいったんだ。ときどき灯篭があって周りをぼんやり照らしてくれるんだ。ロウソクもないのに何か不思議なんだ。
道の外に森が広がっているんだ。薄暗いからよくは分からないんだ。時々何かの呻き声が聞こえるんだ。お化けの国では絶対に道を外れてはいけないんだ。
少し進むとお地蔵様が並んでいるんだ。本当にいっぱい並んでいるんだ。表情も全部違うんだ。泣いてたり、笑ってたり、怒っていたり、どれかもよくわからなかったり、こっちを見てきたり。まだまだ先に進まないといけないんだ。
しばらく進むとつり橋が見えるんだ。つり橋はそんなに長くないんだ。木でできていて隙間が大きいから危ないんだ。ゆっくり渡れば平気なんだ。
すぐ下には川が流れているんだ。暗くてわからないけど何かが跳ねる音がするんだ。たぶん大きな魚がいるんだ。これを渡ればお母さんに会えるんだ。
少し進むと大きな鳥居が見えるんだ。その先に祠があるんだ。そこでお母さんに会えるんだ。みんなもよくがんばったんだ。ちゃんと言っておいて良かったんだ。サインを決めておいてよかったんだ。
鳥居を抜けて僕たちはちゃんと祠に着いたんだ。祠の前に5人立ってるんだ。お母さんがいるんだ。
「お母さん。お父さん」
と、みんな走っていったんだ。鳥居の中では声を出してもいいんだ。お母さんは変わらずとても綺麗なんだ。でもなぜか俯いて悲しそうな顔なんだ。嬉しいかったけどちょっと寂しくもなったんだ。
みんな思い思いに時間を過ごしたんだ。そして時間が来たんだ。お母さん達は帰っていったんだ。僕たちも帰らないといけないんだ。早くしないとお化けの国から帰れなくなるんだ。
僕は鳥居を見つめながら息をのんだここからがとても大変なんだ。
最初のコメントを投稿しよう!