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空の月が半月になり辺りはますます陰りを帯びてくる。こうなってくるとグズグズしていられないんだ。
僕たちは急いで一列に並んだんだ。先頭の人の肩に手を乗せてムカデ競争の型をとったんだ。後ろの人が肩を叩いて合図して、あるいは背中に文字を書いて先頭に指示を出せるようにしたんだ。行きは先頭だった僕は帰りは一番後ろにこないといけないんだ。
「行こう」
最後の声を出して僕たちは出発したんだ。鳥居を抜けると冷たい風が駆け抜けるんだ。帰り道では絶対に後ろを振り返ってはいけないんだ。
帰り道は行きと違ってとても危ないんだ。周りから何かの気配がいっぱいするんだ。でも暗いから何も見えないんだ。
一番後ろになるのは初めてだったんだ。何かがすぐ後ろにいるんだ。耳のすぐ近くで息遣いが聞こえるんだ。たまに服を引っ張られたり足を掴まれたりしたんだ。初めはすごく怖かったけど少し慣れたんだ。一番最初に声を出しそうになったけど堪えられたんだ。無視したらいいからこの程度済むのはむしろ好都合なんだ。
「何?」
それは不意に起こったんだ。少し進んだところで先頭のタカシ君が急に声を出して後ろを振り返ったんだ。一瞬コッチが何?って思ったぐらい唐突だったんだ。するとタカシ君の顔が見たこともないぐらいに歪んだんだ。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁ」
タカシ君は大きな声を上げながら前に走り出したんだ。お化けの国では走るとロクな事はないんだ。走り出したタカシ君は急に止まったんだ。
何か暗闇から大きな手がタカシ君の腕をしっかり掴んでいるんだ。見たこともないくらいとてもとても大きい手なんだ。それ以外は暗くて見えないんだ。そのままタカシ君は森のほうに引きずられていったんだ。
「キイィィィィィィィィィッィィィ」
タカシ君が消えた森のほうから音がしたんだ。今まで聞いたことがないような音だったんだ。地震が起きる前に鳥が鳴いてた音に近かったんだ。まるでサイレンがなってるようなよくわからない感じの音だったんだ。
静かになってもタカシ君は戻ってこなかったんだ。僕は背中に合図したんだ。僕たちは出発したんだ。
その後は順調に進んでいったんだ。たぶん全員が早く帰りたかったんだ。
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