お化けの国

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    空の月は徐々に小さくなっていく。僕達はつり橋に差し掛かったんだ。  その時つり橋の先頭を歩いていたキヨシ君が急に視界から消えたんだ。何が起こったのかわからなかったんだ。よく見るとキヨシ君の下半分が宙ぶらりんになっていたんだ。板が壊れて落ちそうになってたんだ。キヨシ君は起き上がろうとしてたけど上手くいかないんだ。  僕の位置からは見えたんだ。川からいっぱい手が伸びていてキヨシ君を引きずり込もうとしていたんだ。キヨシ君もがんばったんだ。必死に足で蹴り上げて手を追っ払っていたんだ。手が一瞬怯んだのか少し離れたんだ。キヨシ君は起き上がろうとしてたんだ。  そのとき僕の位置から見えたんだ。川からとても大きなコイが飛び出してきてキヨシ君の下半分をパクリと食べてしまったんだ。コイはそのまま川の中にに消えてしまったんだ。キヨシ君は動かなくなりズルリと下に落ちていったんだ。  キヨシ君は川から浮かんでこなかったんだ。全ては一瞬のできごとだったんだ。僕達は落ちないように慎重に渡り先に進んだんだ。    空の月がさらに欠けてきた。真っ暗になる前に帰らないといけないんだ。  しばらく順調に進んだんだ。お地蔵様達がみえてきたからもうそれほど遠くではないんだ。と思ったら急に先頭のアケミちゃんが立ち止まったんだ。何だろうと思ったら急に走り出したんだ。僕たちを置いて全速力で走っていったんだ。あっという間に視界からいなくなってしまったんだ。    僕は追いかけたい衝動に駆られたんだ。僕は気が気でなかったんだ。でもシュン君が前にいたので動けなかったんだ。本当にお化けの国では走ることはロクなことがないんだ。僕はただただお地蔵様に願うしかできなかったんだ。  僕たちは歩いて進んだんだ。最後のお地蔵さんに差し掛かったときだったんだ。最後のお地蔵さんだけ異様に大きく膨らんでいたんだ。こんなに大きなお地蔵様はなかったはずなんだ。前面何か液体が滴っていたんだ。お地蔵様はとても満ち足りた顔をしていたんだ。  道に落ちていたアケミちゃんのリボンを一瞥し僕達は歩き出したんだ。  
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