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お婆さんはキクさんと言った。
改めてお線香を上げに伺いますと言い、治療が終わり落ち着くと、点滴と一晩検査入院で娘さんの真理さんが、お店までわたしを送ってくれた。
もうすっかり日が暮れ、夜も8時を過ぎ、店はシャッターが閉まっていた。
「あれっ?どうしたんですか?」
少し拗ねたように、薄暗い灯りの下で穂村さんが立っていた。
「どうしたのじゃありません。飯いくって言ったじゃないですか」
「えっ?ああそういえば」
思い出したらお腹が鳴った。
何も口にしていなかった。
「お腹がすきましたよ。付き合ってもらいます」
「はい、…すみません」
穂村さんには、お腹がすくと機嫌が悪くなり敬語になる癖があった。
「その。飯以外にも付き合ってもらっていいですか…?」
「えっ?それはどういう…」
見上げた顔が耳まで赤く見えたのは、灯りのせいだけではなさそうだ。
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