第1章

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 夏休みも過ぎた空は、ムカつくくらい晴れている。相も変わらず蝉は鳴いて、夏を終える気配はない。 「なあなあ、どうする? 文化祭」 土間が茅ヶ崎に聞いた。茅ヶ崎は不快な気持ちも表に出さず、にこやかに答える。 「そうそう、それが今日の議題! いいところに気がついたな、土間」 しかしそんな表情をするのは茅ヶ崎だけだ。第三者の後藤は頬杖をついて、じとっと土間を見た。 「あんたも考えてよ。本当副部長の威厳ないな」 茅ヶ崎は苦笑い。土間はちぇ、と呟き、机にうなだれた。 「二年は? 何か、いいネタ知らない? 赤坂とかさ」 「え……っ」 後藤からいきなり話を振られ、驚いたような顔をする赤坂。前屈みになっていた身体を起こした。目が泳いでいる。 「赤坂さあ、来年この部活を引っ張っていくのはあんたらだよ? しっかりしてよ」 「あ……はい」 しゅんとしてまた目線を下げた。隣では、榎本が笑っている。  市立榊原高等学校演劇部。約一ヶ月半後の文化祭では、彼らの枠が一時間用意されている。それへ向けての話し合いだった。  にやにやと口角を上げた榎本の向こうでは、赤坂と馬場が熱心にメモを取っていた。さらりと流れる黒髪が美しい。 「ちなみに去年はセロ弾きのゴーシュ、その前は安寿と厨子王だったよ」 昨年度一年生だった赤坂、榎本、馬場は黒子だった。今回は外部の舞台ではないが、三年生はこれで引退になるため、三年生が重要な役になるのが例年だ。 「あ、そうだ!」 パチンと土間が指をならした。皆が一斉に彼に注目する。待ってましたとばかりに、彼は部室の隅にある棚を指差した。 「その中、台本が入ってるんだよ。かなり古いものまで。そこから探すってのは?」 茅ヶ崎がぽんぽんと黒板の右隅にある棚を叩いた。 「この中か?」 「イエッサ!」 イエス・サーの使い方が何かおかしい。そう赤坂は思ったが、特に指摘をしなかった。それよりも、棚の中が気になる。
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