好き。その二文字が言えなくて

2/4
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
あぁ。好きだな。やっぱり。 教科書を覗き込み先生の横顔が近づく。ふわりと香るこの香水の匂いを嗅ぐと落ち着く。 甘い香りにうっとりとする。 だけどそれも今日で最後なんだ。 もう何年も一緒に過ごしてきた。会えるのが普通、笑い合えるのが普通。 私はそんな個別指導担当の先生のことが大好きだった。 長年女子校育ちの私は先生出会う前はいつも少女漫画ばかり読んでいて、いつも漫画に出てくる俺様男子に恋してた。 いつか私もそんな人と恋したい。付き合いたいって思っていた。 そんな時出会ったのが先生だった。 出会ってすぐの先生はとっても優しい人だった。 人見知りの私は最初、先生の話すテンポについていけなかった。 けど、先生は私のテンポに合わせてくれた。 私がどもりながら話しても、笑わずに 「うんうん。」と聞いてくれた。 話しててとても楽しかった。 一人称は僕。 私が漫画で好きになるような人とは逆のタイプの人だと思った。もちろん塾に恋しに行っていたわけでは無いが。 ところがある日のこと。 「俺さー…」 俺?誰だ?一瞬耳を疑った。出会って2年は過ぎていただろう。突然先生は"俺"と言ったのだ。 その後話をしていたら先生は再び僕と言ったしまあ、たまたまだろうと思っていた。しかし先生はまた自分のことを"俺"だなんて言い出す。 その時だろう私の鼓動が確かに高鳴ったのは。 自分は本当に俺様男子好きだなあ。と思った。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!