05 【呪】

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05 【呪】

西側の壁は、一面のガラス張り。 その向こうに拡がる街並は、夕暮間際の淡い影の中。 図書館一階の、ティールーム。 おしゃれなクロスの掛けられた、おしゃれな曲線のテーブル。 …いえ。 と言うか…なんだろう? 要するに、『行き掛かり』とか言うべき状況…? とにかく。 私は今、スピカさんの向かいの席に居て…アイス・ティーのストローを、指の先でいじっている。 隣の椅子には…好きらしい? ジンジャー・エールが無かったため、しぶしぶ? カルピスを啜る、まる子さんが居る。 「…のどが、乾くよね? 『言葉』を、つかうと」 アイス・カフェオレのグラスから、唇を離して…スピカさんは、静かな口調で。 「…ああ、だからさ、今度は、ちゃんと、ジンジャー・エールのあるとこ、連れてってくれよな? 」 なんて、まる子さん…たぶん、言わない方が良いことを…? 『良かったら、五分だけ、話さない? 』 スピカさんからの、そのお誘いを断れなかったために…まる子さんと私は、いま、この場所にいる。 ひょっとして…いまだに、のんきに? 三階の画集の書棚の辺りに居る? お姉ちゃんのことは…もちろん、気にはならないでは無かったのだけれど。     
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