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「ええ、たぶん。僕には死後の世界はわかりませんが、僕の魂がこの死体にとどまっているのは、たぶん僕が真実を知りたい気持ちでつながっているのではないかと思います。」
「わかったよ、崇。で、ひとつ問題がある。お前の家にはどうやって入ったらいい?」
そう男が質問すると、マンションのカードキーが差し出された。
〇ナルドによって。
男は、死体の言う通りに、マンションにカードキーで難なく侵入し、枕元の携帯電話の充電器の置いてあるサイドテーブルのとなりのコンセントに盗聴器を仕掛けると、難なくマンションを出ることができた。
「一体、俺は何をやっているのだ。」
男は、自分の行動に我ながら呆れていた。
鮎を釣りに行ったら、山中で死体を見つけ、その死体に言われて赤の他人の部屋に盗聴器をしかけるなど、正気の沙汰ではない。
だが、男は、密かにスリルを味わっていた。
誰でも犯罪者に成りうるのだなと、つくづく思った。
盗聴を始めて、確かにその部屋には男の気配はあった。
ただし、電話の会話のみだ。
その内容は、にわかには男にとって信じられない内容であった。
数日後、男は、またあの死体を見つけた場所へと足を運んでいた。
死体は、ますます腐敗が進み、大量の蛆虫が巣食っていた。
「す・・すみません。こんな姿で。気持ち悪いでしょ?見ないでいいですよ?」
崇の健気な言葉に、男は胸が詰まった。
「わかったことがある。」
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