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01.その疾患を治癒させるために破壊する
title:社会病理
食堂でひとり食事をとっていると、いろんな声が聞こえてきた。斜め後ろに座った男子学生があの子と一発キメて来るだの、1つ席を空けた左隣の女子学生が今日は彼氏の誕生日で10万以上は余裕で使うだの、加工した写真に沢山の「いいね」がついて嬉しいだの....周囲を飛び交う雑音には、自分の興味をそそるものがひとつもなかった。
そんな自分が強く興味を持ったのは孤独だった。僕は本当の孤独を知らない。
ひとりぼっちだと思いながらも、こうして小さな社会の中で黙々と食事をしている。
そんな時、有名な芸術大学の教授が、なにやら本当の孤独を味わうことが出来るための仕組みを作ったそうだ。
芸術には興味がなかったが、今度表参道で個展が開かれるらしい。
個展名は「The」。いかにも芸大らしい抽象的なネーミングである。
この個展を知ったのは、その芸大に通っている友人から伝わってきたものだった。
抽選でしか個展には入れず、自分もどうしてもその個展に行きたいから応募してほしいとのことだった。
受け取った用紙にはグループ参加・個人参加を選ぶ欄と、その応募理由。
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