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★ ☆ ★
1年後、クラスメイト達が教室で帰る準備をする中、私はここで最後まで読んでしまいたい本があったため、教室に残って本を読んでいた。
「霧夜、テストも終わったしカラオケにでも行こうぜ。もう何人か誘ったんだが」
「急だね……まあ、暇だし、すぐ帰ろうとも思ってなかったからいいけど」
「よーし、じゃあ他のやつ連れてくるからちょっと待っててもらえるか?」
「うん、分かった」
どうやらどこかの男子グループはカラオケにでも行くようだ。私は結局お母さんの手紙を受けて生きる意味を見つけたけど、友達はできないままだった。
その時だった。不意に目が合ったのは。
「あ……」
彼は何か言いたげだったが、私は『それ』が急に来たことに驚き、不意に目をそらしてしまった。
……だけど。
私は確信していた。あの子は……新中霧夜くんは、私と似ている、独りで苦しんでいる子だ。
偶然にも新中くんとは家が近い。多分、引っ越してからは地域の住人とコミュニケーションを取っていないから、向こうは知らないと思うけど。
「私はあの子に……寄り添ってあげたい」
これが好きという感情なのか、はたまた嫌いなのか。それとも居場所は持っている彼を羨ましいと、近づきたいと感じたのか。寄り添いたいという気持ちは何の感情から来ているのか、それはよく分からなかった。
「もしかしたら、友達に……いや、恋人にもなれちゃうかも……? えへへ……」
そんな普通の女の子みたいな感情も持ち合わせて、私は居場所を、愛を渡せそうな人を今見つけた。
生まれてきてくれてありがとう。生きてくれてありがとう。
そうやって、あの子にも言えたらいいな。
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