1話 『家出』

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「きた・・・・・・」  それは、窓をたたく雪に埋もれてしまうほど、小さなつぶやきだった。  振り返って、そのまま凍りついてしまった。  不安、苦悩、焦燥。それらをすべて飲み込んで、一色の感情にまとめてしまうほどの、怒り。  ミズ姉の顔は、血をすべて抜かれたように、真っ白だった。  それも、青ざめているのではなく、怒りで。  呼吸もできなかった。  今までに、これほど怒気に包まれたミズ姉なんか、見たことがない。      カチ    時計の針がまた動いた。
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