1話 『家出』

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 シャボン玉にうつったもののように、鏡の中の二人がぐにゃりと歪む。その姿は、おぞましいものでもなく、美しいものでもなく。    ただ、不思議なだけだった。  呼吸さえ、止まってしまう。 「・・・あと、十秒。」    ミズ姉のかすれ声が、時計の音に重なった。    カチ  カチ  カチ  カチ  あと、五秒。  そう思った瞬間、ふっと鏡の中から姿が消えた。 「え・・・。」 「そんな、まだ、あと・・・。」  カチ  あと二秒。  カチ    カチ
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