1話 『家出』

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「出て行けーーー!!」 「言われなくても出てくわよ!こんな家!!」  思い切り蹴飛ばしたドアが、一メートル先まで吹き飛んだ。  背中に追すがる母さんの声は、当然無視。部屋まで一気に駆け上がる。  またドア。  ああ、もう。遮るものすべてが、怒りの炎に油を注ぐ。      *** 「またドア壊れたね。」 「もう直さなくていいかしら・・・。」 「・・・いいんじゃ・・・!?」  今度は二階から、雷でも落ちたような音がした。 「また壊したわね、あの子・・・。」  ドアを蹴倒したのは、来年の冬に大学受験を控えた僕の姉、ミズ姉。  一言で言えば、ミズ姉は美人だ。弟の目から見ても。  切れ長の瞳を飾る長いまつげ、形のいい鼻、薄紅色のふっくらとした唇。そしてなにより、まっすぐにのびる長い金の髪。ミズ姉は私立中学に入学したときから、ずっと金髪だ。    僕の家に、父さんはいない。死んでしまったらしい。  ミズ姉は金髪、ついでに母さんも金髪。  僕は・・・
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