20人が本棚に入れています
本棚に追加
ハスは、まったく信用しようとしなかった。
「いや、・・・え?鏡?」
「そ、鏡。」
「鏡って、ドアじゃないよ。」
「当たり前でしょ。なに言ってるの。」
ハスのその大きな瞳が、理解できないことを語っている。
ま、信じられないのは分かるけどね。
でも、私は知っている。
2月29日は特別だ。
4年に一度の閏日というだけではない。
2月29日は、鏡に近づいてはいけないよ。
母さんの言葉、今でも覚えている。表情も、周りの景色さえも。
どうして、と聞いた自分の声も、いつでも頭で再生できる。
鏡に触れると・・・
「あ、洗面所の鏡が、実ははずれるとか?」
ハスは自分の中で納得のいく答えを勝手に見つけたようだった。
「ま、なんでもいいわよ。
とにかく、今日・・・日付で言えば明日になるけど、午前二時に家出するから。生活必需品をリュックに詰めて洗面所に集合よ。」
うなずいたハスは、まんざらでもなさそうだった。
最初のコメントを投稿しよう!