The Binding of Isaac

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The Binding of Isaac

 夏の日差しが、カーテンを通して、白い頬に触れていた。 「ん……?」  薄手の毛布から、金の髪が多方向へ優美な川のように流れている。 「Morning?」  純粋という宇宙が広がる、サファイアブルー瞳がゆっくり開けられ、 「What time?」  少し気だるく、体をよじる仕草は、まるでビーナスのように美しい。中性的な雰囲気を漂わせ、その胸元に、肌身離さずかけられた、ロザリオがシーツの上にさらっと降りてきた。 「Prayer(祈り)……」  春風のように微笑むその人は、ルー スチュワート、十七歳。国籍はイギリス。家業の都合で、日本へ去年の四月やって来た。思考回路は複雑怪奇。物腰は、天使であり、全ての人をひれ伏させるような威圧感のある皇帝。性格は二面性も持っていて、時には混在する時もある。  今は、純粋さを持つ天使。ロザリオを両手で握りしめて、 「I thank God for having my day happened safely. Amen」 (今日という日を、無事に迎えられたこと、感謝します)  運命に操られるように、敬虔(けいけん)なクリスチャンとして生きている。一日の初めはいつも、生きていることへの感謝を捧げることから始まる。  ローブを思わせる、白いシルクのパジャマ。すうっと起き上がって、机の上に乗せられた、聖書へとサファイアブルーの瞳が向けられた。 「The Binding of Isaac. (イサクの燔祭(はんさい))……」 (なぜだろう?  そこが、とても気になるんだ。  ボクの中で、強い引っ掛かりがあって。  何かを警告してるみたいで。  心……ううん、魂の奥底で、チリチリして。  おかしくなりそうなんだ。  誰か別の人がいるようで……)  そこで、不意に電子音が、  ピピピッ!  と鳴って、美しい指先が携帯へ向かって、タップしたと同時に、ミラクル天使に大変身! 「ち~こくさんと、ひ~かる先生、足したら~、仲良しさ~ん♪」 (遅刻すると、光先生に悪戯されるんだ。  彼は頭がとてもいいから、策略してくるからね)
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