Last resort

1/10
前へ
/21ページ
次へ

Last resort

 どこまでも続く青空。  足元には、どこまでも広がる白い雲。  そこから、不思議なことに、美しい花や木々が絶妙な配置で生ける中庭。  ここは、神世のスメーラ神殿。  スメーラはいつも通りの朝を迎え、ガラスのような素材でできた、書斎机の椅子へ腰掛けた。羽根ペンを取り、書類に目を通そうとすると、壁も何もないのに、ドアだけが立っている、それがノックされた。 「はい?」  優しく凛とした声が、穏やかな空間に舞った。水色の長い髪の女が顔をのぞかせ、 「おはようございます、スメーラ様」 「おはようございます。どうしたんですか? (ゆう)さん」 「今、お時間よろしいでしょうか?」  スメーラは手に持っていた資料から手を離し、にっこり微笑んだ。 「えぇ、構いませんよ」  悠は資料を持って、上司の書斎机の前に立った。 「ルシア シンダールの能力のことなんですが……」 「えぇ」 「こちらにしようかと思います」  悠はそう言って、持っていた資料をスメーラへ差し出した。優しさの満ち溢れた瞳で、その資料を眺め、 (そうですね……?  これだと……勝利するという可能性は、76.56%ですね。  少し低いかもしれませんね)  太陽がどこにもないのに、明るいという不思議な空を見上げて、 (ですが……あの者の物の考え方……直感……。  五千年前のこと……それを考慮すると……。  86.67%に変わります。  しかし、やはり低いですね。  時間軸がずれる可能性は65.6%  これでは、五千年前と同じことが起きるかも知れませんね。  全てのことを考えると……)  森の世界は、メインの王子が魔法を使うため、空間や時間を勝手に変えてしまうことが起きる可能性大。他の世界と違って、ゴールの時間が長くなる可能性が出てくる。攻撃を他の世界へ集中させて、その隙に無事に時を進ませるという作戦が、取れなくなってくる。  だが、スメーラは神であり、悠の上司でもある。全ての人の心の成長を考えて、行動しなければならない。そのため、スメーラは悠をじっと見つめ返して、 「これで構いませんよ」 (あの者の認識を変えるには、こちらの方法が一番合理的かも知れません) 「わかりました」
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加