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Last resort
どこまでも続く青空。
足元には、どこまでも広がる白い雲。
そこから、不思議なことに、美しい花や木々が絶妙な配置で生ける中庭。
ここは、神世のスメーラ神殿。
スメーラはいつも通りの朝を迎え、ガラスのような素材でできた、書斎机の椅子へ腰掛けた。羽根ペンを取り、書類に目を通そうとすると、壁も何もないのに、ドアだけが立っている、それがノックされた。
「はい?」
優しく凛とした声が、穏やかな空間に舞った。水色の長い髪の女が顔をのぞかせ、
「おはようございます、スメーラ様」
「おはようございます。どうしたんですか? 悠さん」
「今、お時間よろしいでしょうか?」
スメーラは手に持っていた資料から手を離し、にっこり微笑んだ。
「えぇ、構いませんよ」
悠は資料を持って、上司の書斎机の前に立った。
「ルシア シンダールの能力のことなんですが……」
「えぇ」
「こちらにしようかと思います」
悠はそう言って、持っていた資料をスメーラへ差し出した。優しさの満ち溢れた瞳で、その資料を眺め、
(そうですね……?
これだと……勝利するという可能性は、76.56%ですね。
少し低いかもしれませんね)
太陽がどこにもないのに、明るいという不思議な空を見上げて、
(ですが……あの者の物の考え方……直感……。
五千年前のこと……それを考慮すると……。
86.67%に変わります。
しかし、やはり低いですね。
時間軸がずれる可能性は65.6%
これでは、五千年前と同じことが起きるかも知れませんね。
全てのことを考えると……)
森の世界は、メインの王子が魔法を使うため、空間や時間を勝手に変えてしまうことが起きる可能性大。他の世界と違って、ゴールの時間が長くなる可能性が出てくる。攻撃を他の世界へ集中させて、その隙に無事に時を進ませるという作戦が、取れなくなってくる。
だが、スメーラは神であり、悠の上司でもある。全ての人の心の成長を考えて、行動しなければならない。そのため、スメーラは悠をじっと見つめ返して、
「これで構いませんよ」
(あの者の認識を変えるには、こちらの方法が一番合理的かも知れません)
「わかりました」
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