4人が本棚に入れています
本棚に追加
「『はい』じゃないわよ! あたしが魔法をずっと使わなくちゃいけないってことじゃないの~。その間、狙われたらどうすんのよ?」
(フレナスにバレたら、あんた、それこそ、世界崩壊しちゃうじゃないの。
それから、守るには、あたしの魔法が必要ってことでしょ?
そこに、あの男が攻撃してきたら、あたし一人じゃ防ぎきれないわよ。
あんた、あたしを殺す気ぃ?)
悠は穏やかな笑みで、こんな言葉を口にした。
「大丈夫です。レイトは死にませんから」
(そこは、きちんと計算してます)
レイトは軽く腕組みして、言い返す。
「あんた、あたしの過去を、その笑顔で、よく利用するわね~」
(肝が座ってるわね、あんた)
「はい」
(おそらく、序盤は狙ってきません。サンドル ガルディーたちは)
平然とうなずき返してきた悠を前にして、レイトは小言を言うのをやめ、真面目な顔で、
「ルーちゃんとこが、あの女と一番関係してるのよ。それはどうすんのよ?」
(記憶がないってことは、王子の仕事するわよ、きっと。
そしたら、使命のひとつが果たせないじゃな~い。
オリヴィーンの血族の、ルーちゃんが解決しないと、戦いに負けちゃうでしょ?)
「そちらは、大丈夫です」
(あの者は、できます)
レイトは長年の付き合いがあるルシアの特徴を思い出して、
「それって、国民全員、殺すってこと?」
(ルーちゃんするわよ、それ。
自分に対しても、悪に対しても異常なほど厳格だから~)
「それもあるかもしれませんね」
悠はにっこり微笑んで、大きくうなずいた。レイトは神をまじまじと見つめて、
「あんた、母性がずいぶんあるわね」
(ルーちゃんのこと、何でも包み込みそうな勢いね)
戦術の説明がひと段落したところで、レイトはうず高く積まれた未来の可能性を見上げて、
「でも……」
アメティス王子のアッシュグレイの瞳が不意に陰った。
「……でも、それでいいのかもしれないわね、ルーちゃんには」
(悔やんでたものね、五千年前のこと。
思い出さない方が、幸せよね、きっと……)
「はい……」
悠はどこかぼんやりとした瞳で、返事を返し、もうひとつ、
最初のコメントを投稿しよう!