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「それから、出来るだけ、こちらの世界にいるようにしますから」
(政治関連は、あっという間に解決する可能性が高いです。
ですから、真実の愛をはぐくみの方が重要になると思います)
レイトはラピスラズリのある決まり事を思い出して、悲しげにため息をついた。
「そうね、あっちじゃ難しいものね」
(精霊族と人魚族って……あの関係だものね)
「そういうことです」
(恋愛に発展したのが不思議なくらいです)
レイトは小言も言わず、寂しげな顔を空へやった。
「あたしの……せいよね、それって……」
(あたしが……間違えなかったら、こうならかったのよ、きっと)
「3dr change《サードチェンジ》と1st rewind《ファーストリウィンド》のことですか?」
(ふたつ前と、三つ前のことですよね? レイトが気にしているのは……)
神に図星を指されて、レイトは言葉をなくした。
「…………」
(あんたは知ってるのよね、全部……)
悠は優しげに微笑んで、
「後悔ですか?」
(意味があったんだと思いますけど……)
「さぁ、どうかしらねぇ~?」
レイトは気の無い返事をし、サラサラの髪を耳にかけた。アッシュグレーの瞳の奥を悠はのぞき込んで、神の余裕で少しだけ微笑み、レイトは素知らぬふりで、頬で神の視線を受け止めた。
「…………」
「…………」
悠とレイトの間に、穏やかな風が吹き抜けていった。しばしの間、沈黙が広がる。レイトは生きている条件が、他の人とかなり違うため、記憶がみんなよりも、いくつも前まで残っている。
レイトは気を取り直して、庭の植え込みに視線をそらし、
「夢は見せるの?」
(五千年前の記憶は見るの?
あの場面、見せるの?)
「そちらはまだ調整中です」
(まだ、しばらくあとのことですから……)
来たる戦いまでは、まだ三十年近くある。調整はギリギリまで行われる。転生した人たちが選択肢を選ぶたびに、未来は変わってしまう。そうなると、全体の調整を、いちいちしないといけないことに。
レイトは剣の柄に手をかけ、
「あたしは見せない方がいいと思うけど……」
(精神壊すわよ、きっと……)
そして、悠とレイトの言葉はまた途切れた。
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