Last resort

5/10
前へ
/21ページ
次へ
「それから、出来るだけ、こちらの世界にいるようにしますから」 (政治関連は、あっという間に解決する可能性が高いです。  ですから、真実の愛をはぐくみの方が重要になると思います)  レイトはラピスラズリのある決まり事を思い出して、悲しげにため息をついた。 「そうね、あっちじゃ難しいものね」 (精霊族と人魚族って……あの関係だものね) 「そういうことです」 (恋愛に発展したのが不思議なくらいです)  レイトは小言も言わず、寂しげな顔を空へやった。 「あたしの……せいよね、それって……」 (あたしが……間違えなかったら、こうならかったのよ、きっと) 「3dr change《サードチェンジ》と1st rewind《ファーストリウィンド》のことですか?」 (ふたつ前と、三つ前のことですよね? レイトが気にしているのは……)  神に図星を指されて、レイトは言葉をなくした。 「…………」 (あんたは知ってるのよね、全部……)  悠は優しげに微笑んで、 「後悔ですか?」 (意味があったんだと思いますけど……) 「さぁ、どうかしらねぇ~?」  レイトは気の無い返事をし、サラサラの髪を耳にかけた。アッシュグレーの瞳の奥を悠はのぞき込んで、神の余裕で少しだけ微笑み、レイトは素知らぬふりで、頬で神の視線を受け止めた。 「…………」 「…………」  悠とレイトの間に、穏やかな風が吹き抜けていった。しばしの間、沈黙が広がる。レイトは生きている条件が、他の人とかなり違うため、記憶がみんなよりも、いくつも前まで残っている。   レイトは気を取り直して、庭の植え込みに視線をそらし、 「夢は見せるの?」 (五千年前の記憶は見るの?  あの場面、見せるの?) 「そちらはまだ調整中です」 (まだ、しばらくあとのことですから……)  来たる戦いまでは、まだ三十年近くある。調整はギリギリまで行われる。転生した人たちが選択肢を選ぶたびに、未来は変わってしまう。そうなると、全体の調整を、いちいちしないといけないことに。  レイトは剣の柄に手をかけ、 「あたしは見せない方がいいと思うけど……」  (精神壊すわよ、きっと……)   そして、悠とレイトの言葉はまた途切れた。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加