Last resort

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「…………」 (あの者が原因ではないんですが……) 「…………」 (ルーちゃんのせいじゃないのに……)  ふんわり天使のルシアの笑顔が蘇って、あの純粋無垢な瞳の持ち主に、課せられた五千年前の運命を思い返すと、しばらく沈黙が続いてしまった。  悠が先に我に返って、持っていた資料をレイトへ見せ、 「あと、こちらをしてください」 「まだ、あんの~?」  レイトのアッシュグレイの瞳に映った文字を見て、悠に射殺すような視線をやった。 「あんた、あたしに何させる気ぃ? 何なのよ、このオプションは」 「そばにいた方が何かといいですよ」 (いつ、計画変更してくるわかりませんから、ルシア シンダールは)  あまりの内容に、レイトはあきれ顔。 「あたし、そんな歳じゃ、もうないんだけど~」 (旧石器時代ぐらい前の話じゃない、これって。  それくらい、古いポジションなんだけどぉ~)  そこへ、悠の強引な言葉が、 「これは戦術のひとつなので、お願いします」 (レイトに拒否権はありません。  全ての世界で、調整済みです)  レイトは珍しく顔をしかめて、 「あたし、あの魔法使いたくないんだけど……」 (すごい罪悪感が出るから、かけたくないのよ)  悠はにっこり微笑みながら、こんな提案をした。 「ヒュー ウィンクラー経由で、理事長へ申し出れば、問題ないと思います」  レイトはいぶかしげな視線を悠へやって、 「ヒュー ウィンクラー? あたしの言うこと聞かないわよ~、接点が全然ないんだから」 (あんた、あたしが一番興味のない王子持ってきたじゃない?  それじゃ、動かないわよ、あたしは)  悠は腕時計へ目をやって、 「そうですね……? あと、十年後には、あちらからの攻撃が、彼の者に向かってきます」  レイトの瞳が急に真剣さを増した。神経を研ぎ澄ませ、高い霊力を使って、未来を見て、 「……そう、そういうこと。それを利用しろってこと?」 (ヒュー ウィンクラー、狙われるのね。  そして、心を閉ざす。  航空機事故の真相を探すことになる。  そうなると……それを使えば、動くってことね)  そこまで、考えて、目の前でにこにこしている悠に、レイトはため息まじりで、 「あんた、怖いわね、本当に」 (人の弱みにどんどんつけこんできて~)
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