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「樹利亜さん?」
「あぁ! ごめんなさい」
リナリア…樹利亜の中に、7年前の堂城誠也との思い出がドンドン浮かんでくる。
あの日は、結局堂城君の好きな花も訊けずに、私の一世一代の告白も気づいて貰えなかった。
「大丈夫ですか? よかったらこれ…」
「えっ!」
渚から差し出されたのは、いま巷で大人気の人気アイドルグループ「ホワイトハニー」と不思議のアリスがコラボした数量限定ハンカチ。
その中でも、渚くんが自分に差し出してきたのは、数量限定の中でも、とくに数が少なくファンの間でも、手に入れる確率がほぼ0%近い、アリスの恰好をした人気ナンバーワン:「穎川泉」がデザインされた超プレミアハンカチだった。
「なななぎ君! なんで渚君が…いいいずみんの」
何を隠そう樹利亜は、穎川泉の大ファンなのだ。
リナリア、堂城の事を想い出していた樹利亜は、プレミアハンカチの登場に、コップを持っているのを忘れて渚に襲い掛かる。
「あぁこれですか? 穎川泉本人に貰ったんです」
「えっえぇぇえ」
樹利亜の突然の叫ぶ声に周りにいた人が、樹利亜の方を見る。
「あぁなんでもないです」
自分の声に振り向いた人に向かってなんでもないと叫ぶ。
そして改めて渚に向かって、今度は小さな声で、
「渚くん? 穎川泉とどういう関係なの?」
「樹利亜さん。ここだけの話でお願いします」
_ごくり 唾を飲み込む音_
「僕達、同じ高校の出身なんです。そして、僕、いま探偵事務所で探偵として働いてまして、そこに、彼女から調査依頼がきたんです。そして、解決した謝礼として、彼女からこのタオルを貰ったんです」
「そうだったんですか? あの? 穎川さんが捜し…あぁごめんなさい。私ったらつい?」
探偵に、依頼人の事を訊いてしまって謝ろうとした樹利亜の腕を引き寄せ、自分の胸に抱き寄せる。すると…
『…はぁ…龍治さん…はぁぁぁぁぁ…もう限界…』
『…嘘つき。本当は、もっと欲しいだろ? 泉?』
『…』
『その無言は、了承と受け取ってもいいのか?』
『…ちっ』
『…なに? よく聞こえない。ほら? 泉、なにか早く言わないと…』
『…わわわたたしをあなた色に染めて下さい』
『いい子だ!』
※ICレコーダーに、録音された音声を樹利亜の耳元で再生した。
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