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「あら、いらっしゃい」
すると、店の奥から、白川がひょっこり姿を現す。
「こんにちは白川さん。昴、いますか?」
「…」
白川は、申し訳なさそうに渚を見つめる。
「…あぁ! もしかして? 昴、今日休みですか?」
「あぁ…うん。ごめんね? 折角来てくれたのに」
「気にしないで下さい。あぁそうだ! だったらこれ? 明日でもいいで昴に渡してもらえますか?」
渚は、白川に、開封厳禁と書かれた白い封筒を差し出す。
「昴くんに?」
「はい」
「あぁぁあの渚君?」
目の前に差し出された白い封筒を見ながら恐る恐る尋ねる。
「はい。どうしましたか?」
「やばい物は……入ってないわよね?」
「ふっふふふはぁはぁああああああ」
渚は、白川のその様子に、大声で笑い出す。
「渚君!?」
「白川さん! そんなもの入ってませんよ? これ? 昴に頼まれてた市内近郊の結婚式場のパンフレットですよ?」
「結婚式場? 昴くん達の?」
昴と灯が結婚を前提に付き合って居る事は、会社の全員ならみんな知っている。
そして、二人から、近い内に結婚式に挙げると告げられていたので、なんで、今更、渚に結婚式場の事を相談するのか白川には理由が分からなかった。
だからこそ、白川は、「昴君達の?」と彼に問いかけた。
「そうですけど? 他に誰が結婚される方がいらっしゃるんですか?」
渚は、不思議そうに首を傾げる。
「…」
その反応に白川は、言いたい事を口の中で押しとめる。
だって、こればっかりは、もう自分にはどうする事のできない事だから。
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