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男性を見送り、そろそろ取材の相談しようと、彼の元に行こうとした瞬間、樹利亜の元に、思いもしない言葉が飛び込んできた。
『結婚式場? 昴君達の?』
『当たり前じゃないですか! 他に誰かいるんですか? 結婚する人が』
「…あぁ!」
_パシャン_
聞こえてきた「結婚」と言う言葉に、樹利亜は、手にしていた花を入れる前の水が入った花瓶を床に落としてしまった。
「樹利亜ちゃん!?」
店内から聴こえた大きな音に、白川が慌てて店内に飛び込んできた。
「白川さんすみません。花瓶を割ってしまいました」
「花瓶? もう、心配させないでよ? すごい音がしたから……てっきり何かあったと思ったじゃない」
白川は、割れた花瓶を手で拾うとしていた樹利亜を押しのけて、掃除用具入れから箒を取り出すと樹利亜の代わりにしゃがみ込み掃除を始める。
「白川さん!? 私やりますよ? 自分の不注意ですから」
掃除の手を止めることなく、声だけ樹利亜に語り始める。
「樹利亜ちゃん!? 貴方、割れた花瓶を素手で拾おうとしてたわよね? 怪我すると思わなかったの」
「はい。でも、花瓶の欠片も大きかったので、そのまま取った方が早いと思ったので」
本当は、違う。灯だけでは、白川にもばれているんじゃないかという 動揺を隠す為。
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