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「…6年前、貴女が突然、私達の前から突然居なくなった後、貴女の旦那と名乗る七瀬龍治って人から手紙がきたの? 南浜樹利亜改め、七瀬樹利亜は、私と婚約しましたので、もう、そっちらで働く事はありません。ですので、金輪際彼女に連絡をしないで頂きたい。私達は、この手紙で、貴方がどうして急に居なくなったかを知ったの。でも……」
「……」
樹利亜は、白川の言葉を無言で訊くだけで、何も答えようとしない。
確かに、あいつは、フラワーショップ:ホワイトに、手紙を送り付けていた。
それも、私が、退職願いを出す前に、一方的に。
だから、私は、何も言う事もできずに、ここを去る事になってしまった。
だからこそ、白川さんが、言いたい事が手に取るように、痛いほど解ってしまった
「貴女が好きだったのは、堂城誠也さんじゃなかったの?」
「樹利亜ちゃん。私はねぇ? 一人の男性を一途に愛したことがないから、乙女の顔で、愛しそうに堂城誠也君の事を語り、他のスタッフと恋愛話をしてる貴方が憎い時もあったけど同時に羨ましかった。だからこそ、私は、樹利亜ちゃん。貴方は、きっと彼と結婚するだと思ってた。だから……」
そこで、言葉をいったん切り上げ、樹利亜の肩を掴む。
「樹利亜ちゃん。貴方は、七瀬龍治が好きで結婚したの? あぁ! これだと樹利亜ちゃん。貴方を困らせちゃうね?」
白川さんが、突然、樹利亜に向かって頭を下げ始めた。
「白川さん!? 顔上げて下さい!?」
樹利亜は、白川に向かって、止めて下さいと慌てて制止を掛ける。
「樹利亜ちゃん?」
「白川さん。私は、自分の意思で七瀬龍治と結婚したんです」
白川さん。 貴方からすれば、私は、自分の恋すら叶えれらない臆病者に見えたかも知らない。
「……樹利亜ちゃん? 貴方はそれで幸せなの?」
白川さんが、樹利亜に、中身が違うが質問を変えて、彼女に問いかける。
けれど、樹利亜は、そんな白川の想いに反して……
「白川さん。幸せに決まってるじゃあないですか! もう、白川さん? 嫉妬ですか? 止めて下さいよ? 恥ずかしいじゃあないですか?」
_バン_ 肩を強く叩く音
「樹利亜ちゃん。痛いよ? もう、解ったらもうやめて!」
(白川さん…ありがとうございます)
樹利亜は、白川に聞こえないように、感謝の言葉を囁く。
「樹利亜ちゃん?」
「あぁ! そうだ! 白川さん。そろそろ、取材させて貰いますよ? 私だって、忙しいですから」
「樹利亜ちゃん! ちょっと待て!」
「待ちません!」
樹利亜は、白川に向かって、待ったなしに強引にマイクを押し付ける。
(白川さん……そして、灯さん。本当にありがとうございます。でも、これは、私個人の問題だから)
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